mixiが『「ユーザーファーストなmixi」を目指して』と題するメッセージを発信しました。
私は「これでmixiは死んでいく」と思いました。
と言ってばかりいてもよくないので、批判を交えつつ今後mixiがどうあるべきかを書いてみました。
商品開発における顧客の考え方
商品開発における顧客重視の考え方、は確かにあります。
「顧客の声を聞け」
「答えは顧客が持っているのだからもっとヒアリングの機会を設けろ」
「VOC(Voice Of Customer)を活用しろ」
様々な言われ方をします。
ただし、これが適用出来る業界とシチュエーションは限られる、と私は考えています。
適用出来る業界
適用出来る業界は以下の2つの特徴を持つ業界です。
1:事業モデルが受注生産型である
ex.)システムインテグレーター、注文住宅
→個別の事情を解決することで対価が必ずもらえる
また、その解決策の実行が他のお客様に損害を与えない
2:お客様が知識を持たなくても使える商材を扱っている
ex.)掃除用具、調理器具、生活雑貨、
→その業務を真に知っているのはお客様で、その不満を解決することが他のお客様の利便性にもつながる
mixiはなぜユーザーファーストがマッチしないか
mixiの事業が提供しているものの価値とその扱い方について利用者が知らないからです。
mixiはソーシャルネットワーキングサイトで、提供しているものはコミュニケーションです。
mixiの利用者が持っているのは「特定の(自分の)コミュニケーションをどうしたいか」であり、「コミュニケーションをどうすべきか」ではありません。
ユーザーファーストの陥りがちな罠
ユーザーファースト(顧客第一主義)が陥りがちなのは「顧客の声を聞けば良い商品がつくれる」と思い込んでしまうことです。
顧客の声を聞いて良い商品が開発出来るのなら、みんなが顧客の声を聞くはずですし、同じ声を聞いて同じ商品が開発されるはずです。
そうならないということは、顧客の声だけでは良い商品はつくれないということです。
もし仮に顧客の声で良い商品がつくれるのだとして、なぜ「他社よりも自社の方がよりよく顧客の声が聞けること」に自信が持てるのでしょうか。
他社と同様に顧客の声は上手に聞けないことを前提に戦略を立てる方がうまくいきそうな気がします。
あるべき製品開発の姿
あるべき製品開発の姿は以下の通りです。
1. 実現したい価値を固める
2. その価値を実現出来る商品を企画・開発する
2.5. その価値に共感する人々が集まってくる
3. 顧客(価値に共感する人々)の意見を反映し、ブラッシュアップを図る
製品開発はあくまで目指す価値(mixiの目指すコミュニケーションの実現)に主眼を置くべきものであり、ユーザーファーストは3で扱うべき項目です。
mixiが言うユーザーファーストが市場全体(SNSを利用する人々全て)を指すのなら「日本人が期待するコミュニケーションプラットフォームの実現」という価値を引き出せそうなのでまだ良いですが、プレスリリースを読む限りは「ユーザーとは今現在mixiを利用している人」と読めるので極めて危険です。
mixiは現在顧客が減少している状態であり、こういった状況ではその中身にネガティブな理由で使っている人が多くいる可能性が高いためです。
ポジティブな理由でmixiを使っている人は、mixiへの期待感があり、そうしたユーザーの声を今後のサービスに反映していくことは非常に重要だと思います。
ネガティブな理由で残っている人は、隙あらば他に移動したいが他に行くところが無いからmixiを続けている人であり、こうした人の希望を叶えても新規ユーザーの流入にはつながりません。
mixiが目指すべき方向性
では、mixiはどっちへいったらいいのという話をします。
まずはユーザーのつながりを重要視すべきではないでしょうか。
私もほとんどFacebookに移行し、mixiはアカウントのみ残してたまに閲覧するくらいの状態ですが、mixiでしかつながっていない友人も多いですし、mixiでのみ更新をする友人も多くいます。
このユーザーという資産を活用することをまず目指すべきでないでしょうか。
では、どの手段で活用すべきかと言うと日記とコメントだと思います。
mixiは日本のSNSです。
FacebookやTwitterが普及してきた中でも、従来のweb文化(BBSから始まり、テキストサイト→ブログと進化してきた文化)を一番引き継いでいるのはmixiだと私は思います。
2007年の調査ですが、世界で一番ブログを更新しているのは日本人とのことでした。
→
世界で最も多いのは日本語ブログ――Technorati調査
この時期がmixiのピークで、それ以降にTwitterが普及し、Facebookが日本に参入し、mixiはシェアを落としています。
mixiニュースは日記との親和性も高く、ニュースを読んでそのコメントをフレンドに期待する流れをうまく実現できていたと思います(今はその機能はFacebookやTwitterに移行してしまいましたが)。
日記について原点に立ち返ると、記録でありログです。
Facebookに日記を書いてもフィードで常に流れていってしまいますし、Twitterは文字数の制限があります。
ユーザーのつながりの無いアメブロ等に移行するのは、つながりが重要なSNSではありえない手段と思えます。
実質的に「友人と共有出来る、記録としての日記」の地位を築いているのはmixiくらいしか無いように思います。
となると日記を中心として立て直すべきではないでしょうか。
mixiの新たな価値の可能性
mixiはこんな価値を新たに定義し、提供してみてはいかがでしょうか。
・日々の経験や思いを記録することが重要で、誇りであることの再定義
・それを友人間で共有することで嬉しくなるプラットフォームを構築する
具体的な機能に近づくものとしてはこんな感じ
・過去日記の比較・参照が容易になって、それが価値を生み出すようにする
・友人同士の日記を並べて読むことが出来るようにする
私が、こんなのあったらおもしろいなーと思う日記
最近10年日記というものを見かけたのでそういうイメージをしています。
10年日記というのは10年分の日記帳が一冊になったもので、大体はちょっと豪華めな装丁で5,000円くらいします。
1ページごとに1月1日、1月2日となっていて、1月1日のページは上から今年の欄、来年の欄、再来年の欄、となっています。
毎年同じ日に何をしたかが一目瞭然で確認できるようになっています。
例えばこれを同じ月日ではなく、練習している楽器の発表会ごと、行ったライブごと、子供の成長ステージごとに表示出来たら、自分の経験と都度の思いから成長を体感出来そうです。
※成長を体感させることがmixiの価値・目的かというとちょっと微妙なのですが、まぁイメージとしてご理解ください。
またあるイベントに際して友人同士が得た感情を共有出来る場にすることも良さそうです。
これは現在もリンクを貼ることで実現出来ていると思いますが、例えば「Aさんが2012年夏コミケに関する日記を書きました。あなたも一緒に日記を書いて欲しいと思っています」とお知らせする機能を設けてみる。
そして、その日記からはAさんの日記へのリンクが貼られて、同じテーマの記事として閲覧出来る
正直なところ上記2点ともどういう価値を生み出せそうかちょっとわからないのですが、次の世代のソーシャル日記として評価出来そうな気がします。
いろいろ厳しいことも書きましたがmixiさんは国産SNSの雄ですので、今後の発展を本当に祈っています。
それでは。